第一回 澤田酒造株式会社(愛知県常滑市)

「昔のいいものを再生しつつ現代に合わせる」
代表取締役 澤田 薫 氏



陶の都として有名な常滑に、1848年(嘉永元年)から続く酒蔵。 

ホームページはこちら

今でも、和釜の上に大きな木製のたる(こしき)を載せてお米を蒸し、酒造りの一番大切な行程である麹造りには「麹蓋」を用いるなど、すべてのお酒を昔ながらの製法にこだわり造られています。

六代目 澤田 薫氏にお話を伺いました。

Interviewee:代表取締役 澤田 薫 氏(以下 澤田)

Interviewer:美宴 吉田 綾子(以下 美宴)


美宴: では、澤田社長へ。大きく分けて四つ質問させてください。

まず一つ目が酒蔵さんとして一般の方々に何を伝えていきたいですか。

澤田: はい、ええとやっぱり

日本酒の美味しさや楽しさを伝えたいですね。

それが一番大きいかなと。

美宴: なるほど。日本酒の楽しさとは何だと思われますか。

澤田: 美味しいものを食べて、美味しいお酒を飲む時に、そして人と語り合って飲む時、

また知らない人同士が繋がりあう時とか、そんな風に人と人が繋がっていく、それでこう自然と笑顔になるとかそういったことが全て。

美宴: 和ですね。和醸良酒で和を醸す酒ですね。わかりました。日本酒の美味しさ楽しさを伝えていきたい。

では、二つ目の質問ですけど、今後澤田酒造さんとしてどうなっていきたいですか?何か目標などあれば。

澤田: あのー、これはすごく個々の蔵の話になると思うんですけど、うちとしてはやっぱり今なかなか試練の時というか、

これから今後残り続けるためには今過渡期で今変わらなければいけないことが多い時期で、課題がすごく多いところなので、今後どうなっていきたいかというところでは、まずは

これからも愛され続けるお酒を造り、求められる酒蔵でありたいというところが一番ですね。

残っていきたいというか、存続することがまずは一番かなと。そこから先のヴィジョンはまたその時に考えたいと思います。

美宴: そうですね。

ありがとうございます。

昔のものを守りつつ変化していくというのは、どのような部分が変化だと思われますか。味などが、がらっと変わるとファンの方も戸惑われると思うし、どのような部分を変化させて今後に繋げていきたいと思いますか。

澤田: そうですよねえ、すごく本質的な部分だと思うんですけど。やっぱりお酒造りをもう一度見つめ直した方がいいかな

と思うんですよね。それで今までの惰性の中でやられていることとかもあったりするのでそれは変えて、それが変えていく必要があれば変えていきたいと思うし、それでやり続けてきたことに意味があれば、それはやり続けたいと思うし。でもやっぱり和釜、木甑でして麹蓋で麹を造るというところは芯の部分だと思うのでそこは変えたくないし、それを守ることによってもう少し踏み込んで見ていきたいところがあるんですね。私のヴィジョンの部分に繋がっていくところでもあるんですけど、パフォーマンスだけに終わるのではなくて、本当にそれをやり続けることによって、うちの桶の職人さんたちとのまた新たな繋がりとか今から起こしていくものとか、小豆島の方でモデル的にやられてますけど、木桶を復活させて自分たちで組んでいくみたいな取り組みとか、やりようによっては出来ているので。今の私ではそういう力量もないし集めてくるだけの力もないんですけど、そうやってまた古いものを今の時代に復活させるという再生ということもやりたいんですね。

美宴: 素晴らしいですね。

澤田: やりたいんですけど、やりきれるだけ回していかないといけない

美宴: 昔のいいものを再生しつつ現代に合わせていく。

澤田: やっぱりそのお酒だけじゃなくて、着るものも食べるものも住むものも全てそうだと思うんですけど、昔からいいと言

われてきているものを今見つめ直しているということは色んなジャンルであるじゃないですか。それが今の現代人の人にもヒットすることもあるし、例えば服だったら化繊だけでは享受できないようなものがウールとか麻とかそういったものにもあるとか。その中でさらに日本ならではの製法があってそれがすごくいいとか。そうゆうものを突き詰めてやっていくことに私たち酒蔵の意味があるかなあと思う。そうゆうレベルや境地まで行きたいんですけど、今ではまだなかなか山積みの問題があるから整理しながらすっきりダイエットしながら回していけるように。みんなまだ若いから若い社員たちの力を伸ばしていきつつやりたいなあと思うんですけど。

美宴: 私はこの度、酒蔵修行を5日間経験させていただきました。いろんな銘柄でいろんな流行りのお酒がある中で、この5

日間、ほんとわずか5日間ですけど学んだことがすごく多くて、やはり白老さんならではのぶれないスタイル。頑固なぶれないじゃなくて、わーっと騒がれてる酒業界の中ですごく守り続けてる伝統とか、そうゆうものがすごく見えてきました。周りに影響されず、三浦杜氏はじめ蔵人さんたち皆さんが、真にお米を大切にして酒造りをされてる温かい思いが伝わってきて、とても勉強になりました。

澤田: わたしたちの蔵の悪さはいっぱいあると思うんですけど、でも良さって言ったらあんまりギスギスして厳しくてストイ

ックでというようなところじゃなくて、

じんわりとほのぼのとした人柄が出ているようなそういった酒蔵があってもいいんじゃないかなあと。

そういった点ではうちの酒蔵は温かな味があると思っていただけるんではないかなあと。

美宴: それにしても、みなさん自主性があって、誰に何を言われることなくパパッと作業に徹するというか、

すごく指導が行き届いているんだなあと感じました。

澤田: いやいや、まだまだですよ。

美宴: 気がつくとみなさんバーっと散らばってそれぞれの仕事に集中されているので、本当に素晴らしいなあと思いました。

最近ではデータ管理で数字化されている中で、このように五感を大切にされている。とても人間らしく、手触り、香り、味、温度っていうもので日替わりで体感しながら作るっていうのは、今時のコンピューター管理では出来ない部分ではないかと感じました。

澤田: そうですねえ、数字管理というのはもっとしなくてはいけないと思っているんですけど、そういったところは苦手とし

ているところなので。

美宴: でもまたそこにも良さがあるのかもしれません。

はい、では次の三つ目の質問なんですけど、日本酒とはどのようなものだと思われますか。

澤田: 日本酒とはですか?

本当に古くからの神様と繋がりのあるものもお酒ですし、切っても切り離せないものだと、日本人にとっては。またそういったところを知らない人が多いのでそうゆう風に感じてもらえるようにお酒を作りたい。

特別なものじゃなくて、でも特別な日のものでもあるし、日常的なものでもあるし、人の暮らしに寄り添っているんだろうと思いますね。

美宴: 日本人ならではという感じでしょうかね。

澤田: 冠婚葬祭、四季を通じていろんな行事に全部お酒は登場してきたし、

これからもそういったものは残っていってほしい。

美宴: そういう日本に昔から根付いている当たり前としてあるような日本酒をどのようにプレゼンテーションしていったら

海外の方が分かってくださると思いますか。

澤田: 本当にまだ海外向けのことを何も頭の中で立ち上げて考えたことはないんですよ。なんかまだそこに行くのは時期早

尚のような気がして。不器用なのでいろんなことを一度に考えられないんですけど、こうして訪ねて来てくれる少ない数の外国人の方を通して思うのは、直感的によくわかってくださいますよね!私が何も変わらず同じようなことを話しても、日本人の人よりもすごいセンスで直感で感じ取ってくれて、すごく感激してくれるんで下手に日本人の方に説明するより物分かりがいいと言うか、そういうふうに感じるので。

美宴: 蔵の中にも英語の説明文とかいろいろあって。

澤田: いえいえ、あれはそのまま変な文章載せたままで変えてなくて、

恥ずかしいんですけど。いつ作ったんだろう。もう10年くらい前かなあ

美宴: 澤田社長も海外に行かれていたとお聞きしました。

澤田: それも言いたくないくらい、全然喋りたくもないし、喋れって言われても喋れないし。そんなんじゃダメなんですけ

ど。(笑)スイッチを入れるのにすごくしんどいので、逃げてます。

だから手伝ってほしいくらいです。

美宴: お役に立てることならおっしゃってください。

では最後の質問で、和醸良酒の和って先ほどもおしゃってましたけど、和とはどのようなものだと思いますか。

澤田: 難しい質問ですねえ。

美宴: 日本の文化でもいいんですけど、“美宴” としては、“和を世界へ”をコンセプトに活動しています。日本酒は日本の和で

もあるし、人間関係を和ませるそうゆう和でもあるし、すべて日本酒と和と人間関係とがつながっていると思うんです。それらを日本酒をツールとして世界へ発信していきたいというのがコンセプトなんですが、その和についてどう思われますか。

澤田:そうですねえ、当たり前にそこにあってあまり文章化できない部分もあるんですけど、う〜ん、和っていうのを謳って

きてないからかなあ。とりたてて和がっていうのをやってきてないのであまりそこについて深く考えたことがないっていうのが正直なところなんですけど(笑)もちろん和ませるとういうのもお酒の会とかを通じて酒蔵の開放とかを通じて常にお酒を飲む人の顔を見ながら日々日々思っていることではあるんですよ。大事にしてきている部分というか、当たり前すぎてるのかもしれないですね。

美宴: いえいえ、難しい質問でした。

この5日間澤田さんにこのように来させていただいて、昔ながらの道具に囲まれて昔ながらのやり方でお酒作りをして、そして一歩出るとセントレアがあって最新のものに包まれているじゃないですか。なんかこのギャップがすごいなあって、ここ数日思うんですよね。

澤田: 逆になんか、そういうのは第三者の人としてでどういうふうに見えるのかというのをおっしゃっていただいて、

今そうかなあと思いました。

美宴: 澤田さんにとってはこのような和が日常だと思うので難しい質問でしたよね。中間に立ってみるとこのギャップが。

近代的なものと日本を守るという部分というすごい差を感じます。観光客の人にとっては、パリやイタリアなどを差し置いて、京都が一番人気なんですって。

日本文化と伝統を見に世界中で一番の観光スポットらしいですね。

澤田: 来客数でってことですか?

美宴: いえ、行きたいランキングで!

京都など守り続けているものに今スポットライトが当たっている時代なのかなあって思いますね。

澤田: そうですよねえ。どんなところをPRするとより澤田酒造がよくなると思われますか。5日間来てみて。

美宴: やはり、人間らしい部分、温かみのある部分が一番の白老さんの魅力だと思います。お人柄であったり、みなさんの昔

ながらの酒造りの本質をすごく大切にされてる蔵だと思いますね。その辺をアピールして、アピールするもんじゃないですが(笑) そういうことは、伝わっていくものなので。それは、私たちみたいな人間が、当事者が言うことではなく、私が5日間経験させていただいて、最終日にこのようにインタビューしたいと思ったのは、見えない部分、商品じゃない部分での思いを伝えたいと強く感じたからです。

澤田: ありがとうございます。大切なお時間を割いて5日間も酒造りに来ていただいてこちらこそありがとうございます。

美宴: 本当に勉強になりました。ありがとうございました。やはり思いを伝えるのは第三者だと思います。蔵の方というの

は、思いがありつつの商品化していくということが本業だと思うので。

澤田: なかなか自分自身のものを表現するのは難しいです。

美宴: 自分のことって自分で一番わからないですよね。私は外国人の方々にテイスティングパーティなどさせていただくん

ですけど、白老さんのお酒はすごく人気あるんですよ。ボディがしっかりしたフワッとした純米のフルボディのものは好まれています。時代の流れってどうしてもあると思うんですけど、ぶれない、大切にする部分をこれからも大切にしていっていただきたいです。ヨーロッパの感覚にすごく似ていますよね。昔ながらのものを、石畳でもそのまま工事もせず大切に使ったり。今の日本はどちらかというと近代化が強いですけど、ヨーロッパにはきっとわかっていただける、クオリティの部分であったり、人間らしい部分であったり、そのようなところを大事にしていればきっと共有できるものってあると思うんですよね。なので、このままでと言ってはなんですが、白老さんならではの他とは違うところを大事にして、そうすればきっと理解していただける文化だと思いますし、質の良さと歴史というのは強みだと思います。

今日は本当にありがとうございました。

澤田: ありがとうございました。

杜氏 三浦 努 氏のインタビュー記事はこちら

bien - 美宴

「和」を世界へ 多種多様な価値観を受け入れ、 伝えることの大切さを感じ、 日本酒を始めとする日本文化の魅力が少しでも多くの方々へ届くよう願いを込めて、 人の和、日本の和を広めていきます。